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2008年04月12日

森の精

ある人がこんな話しをしていた。娘婿はドイツ人なのだが、最近日本の山は素晴らしいと、頻りに言う。何処がそんなに素晴らしいのか聞くと、下草がぼうぼうと生えて、そこに魑魅魍魎の息使いが感ぜられるところだという。私はドイツの森がどうなのか知らないが、これは日本独特なもののようである。つまり深叢に森の精のうごめきが察せられ、そこに人間世界とは違った、異世界を感ずることが出来るのだと言う。私は毎日、夜も白々と明ける頃、茶室の6畳間で、小1時間参禅を聞く為に坐る。開け放たれた障子から心地よい春風が吹き抜け、目を閉じると、ウグイスをはじめ、沢山の小鳥たちの大合唱を聞く。背後の山全体が一斉にうごめいているのだ。そこには損したの得したの、地位が上がったの下がったの、というような俗世とは全く違う、異世界の生命の躍動を感ずる。人間世界ばかりが「この世」ではない。便利で効率的で快適な現代社会の真っ只中に居るうちに、昔の人なら誰でも感じていた、「森の精」を失ったのである。

投稿者 zuiryo : 2008年04月12日 10:29

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