2009年08月28日
百年に一度
昨年来の世界的大不況は百年に一度と言われ,特に製造業では顕著で、あっという間に仕事量が半分になったり、無慈悲なほどのコストダウンを迫られたりと、青息吐息だそうである。今日も大型機械を作っているある会社の会長さんがお見えになり、この夏、百日間は無茶苦茶で、どうなることかと心配したが、漸く治まりほっと一息つきましたと仰った。第一線で陣頭指揮を執って居られる方々には、誠に厳しい日々だったと想像される。漸く一段落付いたので老師の顔を拝見に来ましたと、にこやかな顔つきで言われた。平生から必ずしも体調充分ではない方なので、精神的にも肉体的にも余程堪えたに違いないと察せられた。何百人もの従業員とその家族の生活を背負うと言うことは並大抵なことではあるまい。そう言う方がうちの様な禅寺を訪ね、僅かでも心癒されるのであるなら、これに過ぎる喜びはない。関ヶ原への会社訪問と会食を約束して帰られた。戦後史を研究している小説家が、これから日本が歩むべき道は何かと問われ、それは「和」の精神だと言った。弱肉強食は世の常、負け組になりたくなかったら努力することだと、一言のもとに片付ける様な考え方は、日本人の伝統的精神には馴染まない。天地自然と相談しながら果を得て行く農耕民族は、皆が共に良くなっていかなければ自分の幸せもないのだ。和を以て尊しとなすである。こういう経営理念を以ている経営者がまだ日本には残っている。競争のないところに成長はないと言うのも確かに一面あるが、自分だけ良ければ人はどうなってもかまわないということになると、ぎすぎすしてくる。人間だけではなく、万物悉く全ての物に心通わせ、決して私と別の存在ではないと見て行くのが、日本人である。アメリカ的生き方を今一度この機会に見直してみる。百年に一度を、そう受け止めたなら、また新たなものの考え方が生まれてくるのではないかと思う。
投稿者 zuiryo : 2009年08月28日 17:23