2009年11月20日
半分こ
ものは半分こにすると一層喜びが増すと言われるが、小さい頃の私は、これと全く相反して、独り占めすることに大いに喜びを感じていた。だから兄弟喧嘩は絶えず、その原因は常に私だった。父は羊羹を4人の子供に分けるときはいつも定規を持ってきて、子供達の目の前で正確に四等分した。特に私の食い入るような目は、たとえ1ミリと言えども狂いは承知しないという目つきであったと、後年母から聞いた。「そんなにガツガツしてたかね~。」と言ったら、「ほっほっほっ!」と笑っていた。その影響は愛犬ハチにまで及び、食い物についてはそのガツガツ振りは呆れかえるほどだ。人間年齢で言えば既に85歳を超える老齢だが、足腰はやや弱ってきたものの、食い意地の張ってると言ったらない。出入りの職方では、特に植木屋さんが大好きで、お茶の時間になると、職人さん達の輪の中にちゃっかり入り込んで、尻尾を振って愛嬌振りまいて、お茶菓子のおこぼれを頂戴する。その為朝やって来たときから嬉しそうに出迎えるのである。さて半分こだが、私も年を経るうち段々成長して、子供の頃の独り占めはすっかり影を潜め、今では半分こして、分け合って食べるのが一番楽しい。一人より二人、二人より三人、みんな一緒に美味しいな~美味しいな~と言い合って食べる方が、美味しさも倍加する。以前何人かと食事をしていた折り、珍しいサツキマスが出された。そうしたら知人が、これを頂いて帰り、末娘に食べさせてやりたいと言っていた。娘と言ってもその頃は、もういい加減な年齢になっていたと思うが、自分が食べるより娘に食べさせた方が一層美味しいのである。味わいというのは、単に量ではなく、心の働きで増すものなのだろう。幸せはこんなものかな半分こ、である。
投稿者 zuiryo : 2009年11月20日 18:33