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2010年01月25日

骨を折れ!

私は雲水が参禅に来るたびに、「骨を折れ!」と繰り返し言い続けている。室内での指導に余分な言葉は却って雲水を迷わすことになるからだ。己事究明に他人のアドバイスなど要らない。ひたすら自己の内に向かって究めて行く事が唯一の方法なのである。人間は元々弱い者だから、「溺るる者は藁をむ掴む」で、藁にしがみついたって助かる見込みなど皆無なのに、それでも掴みたくなるのが人情である。だから指導者としては世俗の情などかけらも見せてはいけない。そこで、「骨を折れ!」の一点張りとなる。そうしていたら、年末大掃除に踏み台から落ちて、本当に骨を折った雲水が居た。そこまで忠実に実行しなくとも良いのにと言ってやりたいぐらいだが、笑い事ではなく、打ち所が悪く複雑骨折、ドリルで穴を開けボルトで締め付けるという手術になったそうだ。全治数ヶ月の大事故になってしまったのだ。大切な弟子を預かっておきながらこういう事になったのは本当に申し分けない事で、お詫びのしようもないが、よくよく注意して作業をするように皆に注意したところである。で、少し方針を変えて、「骨を折れ!」は止めにして、これからはひたすら、「ど阿呆!バカ!間抜け!」と言うようにする。これなら骨を折られる心配がない。近年は子供の時に野山を走り回ったり、川遊びをしたりと、自然の中で五感を訓練して行く事が無くなったので、どうも平衡感覚が鈍い。何もトビ職が軽業師の如く作業をするような事をせよという訳ではないので、ちょっとした梯子の上での作業くらいは出来無ければ駄目だ。寺では行事には高いところに幕を張ったり、大掃除では梁にしがみついて雑巾掛けをしたりということもある。猿ほどでなくともいいので、準サルくらいにはなって欲しい。まっ、兎も角僧堂ではいろいろな、思いも寄らぬ事があるので、油断もスキもないのである。

投稿者 zuiryo : 2010年01月25日 19:40

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