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2010年11月26日

野良黒パート2

お寺の野良黒猫はハチが死んでから急に大きな顔をし出して、境内は言うに及ばず、建物の中にまで悠々と闊歩している。この間も外出のため玄関に向かって歩いていたら、後ろに野良黒が我が家のような顔をして一緒に歩いているではないか。台所にもちょくちょく顔を出して、いかにも同情を引くような可愛い声で、「にゃ~ん!」と鳴いて、食い物をねだるそうだ。日々ハチの墓参は欠かさず、お供え物のカボチャや人参、ジャーキなどを失敬して行く。不思議なのはパンは食べないと言うことである。ところが最近そのパンを食べるようになった。思うに、生まれてこの方、ずっと野良だったから、パンを一度も口にして居らず、つまり食わず嫌いだったようである。しかしある時ちょっと食べてみたら、意外やこれが旨いと知り、爾来喜んで食べるようになったというわけ。忌明けを境に、ハチのためのベットや小屋を全て片付けたので、そのスペースがやけにガランとして、間が抜けたようになった。今隠寮の紅葉が盛りで、ドウダンの紅と一緒になって、それは見事な美しさだ。ハチはこの庭が大好きで、いつも杉苔の上に腹這いになって、気持ち良さそうにしていた頃を思いだし、紅葉の美しさより真っ白なハチの姿が彷彿としてくる。今日は先住の大心老師の祥月命日で、会下の和尚連中が何人かやって来て、一緒にお経をあげる。一年経つのは本当に早いもので、今年ももうこの時期になってしまった。月日は百代の過客にして行きかふ年もまた旅人なりである。

投稿者 zuiryo : 2010年11月26日 14:04

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