2011年06月06日
スケッチ
久しぶりに先生と友人二人と共にスケッチに出掛けた。場所は嘗て修行した道場の山々を望む田圃のど真ん中であった。曇り空でそよそよと心地よい風が吹き抜け、暑からず寒からず絶好のスケッチ日和で、農道の隅っこに3人坐って描きだした。伊深の里は永年見慣れた風景だが、よく見ると実に絵になる景色である。無相大師がこの地を選ばれたのが何となく分かるような気がした。さて3人並んで描いていると、近くで農作業していた人が寄ってきて覗いては、「うまいもんだな~」などと褒めてくれた。真ん中に座っていた先生の絵を見て、「この人のが一番上手い!」と言うので、「そりゃ~先生だもの!」。次ぎに私のを見て、「この人は、あっちの景色を見ずに先生のばかり見ながら描いている」、ギクッ!鋭い指摘である。時折通りがかる人がちょいと覗いては去って行く。近年私が伊深にやって来るのは、法要儀式の時だけで、直接お寺に行き、終わればそそくさと引きあげる繰り返しだったから、こんなに何時間もじっと坐って景色を眺めることなど無かった。良いところで修行させて貰ったものだと改めて感じた。田舎の人はのんびりしていて、覗いてはしばらく話しをして行く。その内さっき覗いていた人がお茶をぶら下げて再びやって来た。「暑い時期だから、熱中症にかかるといけないので、コンビニでお茶を買ってきたから飲みゃ~」、と言って冷えたお茶を呉れた。まあ何とご親切な、「やっぱり開山さまのお里の人は違うわ!」、と有り難く頂戴し喉を潤した。昼食を済ませ場所を移動して午後からもう1枚描いた。そこはもっとへんぴな山間の集落が点在するところであった。そんな場所に一軒の喫茶店があった。誰がこんなところまで来てお茶を飲んで行くのだろうと不思議に感じた。我々もそこで先ずコーヒーを飲み、目の前に広がるテラスからの景色がなかなか良いので、お願いして場所を貸して貰い、また三人並んで描きだした。すると驚いたことに、結構次々に客がやってくる。知る人ぞ知る店なのかも知れない。ベランダには安楽椅子が幾つも並べられ、皆足を長々と伸ばして山里の景色を眺めコーヒーを飲んでいる。ここからの眺めは連なる山々で一面の緑のため、描く方には大変難しいところだったが、四苦八苦してもう一枚描き上げ夕方帰ってきた。曇り空でも紫外線を浴びたのか、鼻の頭が真っ赤っかになって、心地よい疲労感と共に一日が終わった。
投稿者 zuiryo : 2011年06月06日 10:21