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2012年05月17日

「70歳死亡法案、可決」

この間姪っ子から、「叔父さん、面白い小説があるから送るわね」と言ってきた。しばらくすると、垣谷美雨著の表題の本が送られてきた。題名からして誠に過激なもので、興味津々読んでみた。冒頭には週刊新報に掲載されたという文章が載っている。この部分も既に小説の一部になっているわけだが、『七十歳死亡法案が可決された。これにより日本国籍を有する者は誰しも七十歳の誕生日から三十日以内に死ななければならなくなった。例外は皇族だけである。尚、政府は安楽死の方法を数種類用意する方針で、対象者がその中から自由に選べるように配慮するという。政府の試算に依れば、この法律が施行されれば、高齢化による国家財政の行き詰まりがたちまち解消されるとしている。施行初年度の死亡数は既に七十歳を超えている者を含めて二千二百万人で、次年度以降からは毎年百五十万人前後で推移する。この十年、少子高齢化は予想を上回るペースで進み、それに伴い年金制度は崩壊し医療費はパンク寸前、さらに介護保険制度に到っては認定条件をドンドン厳しくしたにも拘わらず、財源が追いつかなくなっている。戦後日本は急速に食糧事情が良くなり、医療も進歩し、日に日におかげで平均寿命を更新している。はたして長寿は人類に幸福をもたらしたであろうか。本来ならば喜ばしいはずの長寿が、国の財政を圧迫する原因となっただけではなく、介護する家族の人生を台無しにするような側面があることは今や誰も否めない。今後も世界的議論を呼ぶところだ。施行は二年後の四月一日である。』。さて小説の内容だが、老人介護に振り回されて精も根も尽き果てた主婦がすべてをほっぽり出して家出、その後今までは無関心で自分本位だった亭主や息子が俄然頑張り、代わって介護をすると言う筋立て。それからすべてが丸く収まってハッピーエンドとなるのだが、世の中そんなうまい話はない。現実はもっと悲惨な結果に終わると思うが、まっ、そこは小説、作り話だからこれで良しとする。ここで興味深いのはもし七十歳で死ぬことがはっきりしているとしたら、老人が溜め込んだ預貯金も七十歳までに使い尽くすとなれば大いに消費も盛り上がり景気が良くなるかも知れない。しかもいつまで続くかも知れなかった老人のケアーもきっちり七十歳で終わるのだから、若者一人で四人を支えなければならないなどと言う絶望的な状態も一気に解消する。そうすれば若い世代ももっと溌剌として将来に希望がもて、世の中全体が今よりずっと元気になるような気がする。ところで私は満七十歳まで後四ヶ月少々だ。どうやって完全燃焼して死のうか考えよう。

投稿者 zuiryo : 2012年05月17日 16:38

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