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2013年06月20日
墨蹟
遠諱の記念事業で傷んだところをあっちこっち修理をした。その資金はご縁のある方々にご寄付を頂いた。行事は来年なのだが、無事円成の後、お礼のしるしに墨蹟を表具して差し上げることにしている。そのために今からこつこつ書き溜めておかなければならない。達者な人ならどうということも無いのかもしれないが、不器用な私は悪戦苦闘している。さらに困ったことに、10枚くらい書くと筆が裂けたような状態になってしまう。こうなると字を書きたくとも書けなくなるので中止しなければならず、何とかならないものかと思う。筆にも耐用年数というものがあるのだろうか。この筆は知人で大変親しくさせて頂いている人のお檀家で腕の良い筆職人さんが居られるというので、格安で大きな筆を作ってくれた。高名な書道家に見せたら、「まともな値段で買ったら大変高価なものですよ」と言われ、筆の良さの分からない私も、大切に使ってきた。ところが近年すぐに筆が割れるようになった。私の使い方に問題があるのかもしれないが、筆にも寿命があるのかもしれないと感じた。ともかくそういう次第で、ちびちびこまめに書いている。そういう折遙か40年も前に、京都の師匠が外国旅行の土産に買ってきてくれた筆を思い出し、奥の方から引っ張り出した。ずんぐりむっくりした筆で、「筆管が水牛の角で出来ている上等なものだぞ!」とやたら恩着せがましく呉れたことを思い出した。見るからに書きにくそうだし、そのまま一度も使わず仕舞いだったが、背に腹は代えられず書いてみた。ところがそれが実に素晴らしいのだ!筆の毛並みも良く、書き心地も抜群なのである。師匠は昨年亡くなってしまったが、西方に向かって、「ありがとうね!」と言った。
投稿者 zuiryo : 2013年06月20日 14:48