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2014年08月28日
トイレの便座
親戚の息子を連れてスイスアルプストレッキングへ行ってきた。標高が高いと言うこともあって、気温は大体5,6度、日本の冬並みである。マッターフォルンの麓をのんびり歩いて下った。広漠たる景色で、じっとしていると冷たい風が吹き抜け、休憩も風の当たらないところを選んで腰を下ろした。またゴンドラで一気に2500メートルまで上り、目の前にモンブランが真っ白に輝き、大氷河が広がる眺めは圧巻だった。ところで泊まったホテルのトイレ、清潔で良いのだが、便座が真四角、暫く坐っているとあっちこっち当たって痛い。どうしてこういう形状になったのか不思議。次ぎに泊まったホテルでは、一応日本の形に似ているのだが、どうもしっくり感がない。やはり暫くすると痛くてしょうがない。そう思ってみると、氷河鉄道も別の山岳鉄道も、電車の形が妙にゴツゴツしている。日本のように丸みがない。連れて行った息子は「乗りテツ」なので大喜びだったから、それは良かったのだが、この妙にゴツゴツした感じがしっくりこない。便座の話にこだわって恐縮だが、何となく当たり前に使っていたトイレだが、ウオッシュレットを開発した人、お尻にぴたっとフィットする便座を考えた人、新幹線の先頭車両の超流線形を考えた人、この得も言われぬソフトタッチが日本人の特性なのではないかと感じた。これは単にデザインという話だけではなく、そういうソフトさを生み出す源にある、心の丸みが日本人の日本人たる由縁ではないだろうか。
慶長小判
明治天皇のご巡幸について調査している、明治神宮国際神道文化研究所の主任研究員の方がやって来た。うちの寺にはその折ご休憩為された建物が移築され、いまは参禅室として使っている。明治11年10月23日、岐阜市加納のM氏のところには、建物の平面図・当時の写真・玉座の間の飾り付け等々克明に記録された資料が残されている。当時天皇陛下をお迎えするというのは大変なことで、ご休憩のための建物が新たに作られ、玄関、床の間の懸もの、花、花瓶、硯箱、文臺、鉄瓶、香合など、詳しく記録が残されているのには驚かされた。資料を調べていく中に、ご小休茶代として宮内庁より25円頂戴し、その包み紙も保存されていた。勿論中身はないと思って包み紙を逆さにしたらコロッと小判が出てきた。江戸時代の慶長小判である。調査員の話によると明治時代は既にお札になっていたので、頂いた相当額を小判に替えて保存されたのでしょうという話だった。小判の実物を見るのは初めてのことで、百数十年経っても黄金の輝きは衰えず、下世話な私には急にご巡幸が身近な事柄として感じられた。M氏宅は昭和20年7月9日の岐阜空襲で全焼し、うちのお寺もそのとき伽藍は全て焼失した。だから普通ならこの由緒ある建物もなくなってしまったのだが、お寺の関係者のどなたかの機転で、焼夷弾が落ちて境内が火の海になっているとき、皆でこの建物を引き倒したのだそうだ。お陰で何とか焼失は免れ、その後住職の隠寮として使われ、平成5年の大改修の折り、傷んだところを修理し、今は参禅室になっているという次第である。
2014年08月25日
制間は羽を伸ばして・・・
8月に入って酷暑が続き伸びています。3日から東北の竿灯祭りとねぶた祭を見に行ってきました。花火大会もあって、僧堂を離れ知人の老夫婦と、のんびり過ごしてきました。しかし雨にたたられてお祭りは両方共にイマイチでしたが、東北人エネルギーの爆発を垣間見る思いでした。しかもねぶた祭の方は若い女性が中心になっていたのには驚かされました。遊山もエネルギーの要ることで、やっぱり僧堂に帰るとほっとします。掃き清められたうっそうと茂る庭を眺め、蝉の声を聞き、心を巡らすのが一番気持ちの良い時間です。一日一回午後から裏山歩きに出掛けます。気温は35度でも山の中は涼風が抜き抜け、せっせと歩いても殆ど汗もかかずに下りてきます。瑞龍寺は本当に良い場所にあるな~と感謝しています。雲水たちは入れ替わり立ち替わり暫暇するので、
やることはいつもと違わないのだが、何となく気分が楽になります。間もなく72歳になりますが、先輩の師家で元気に活躍しておられる方が居るので、負けては居られないと思って、その人を手本にして頑張ります。健康で修行が出来るのが一番です。
2014年08月01日
制間
8月1日は、制中から制間に変わる、変わり目の日である。4月15日から始まった雨安居が終わって、これから雪安居になるのである。真夏の真っ盛りに雪安居とは不思議な感じがするかも知れないが、僧堂は1年を二つの期間に分けて、雨安居・雪安居という。9月14日までは雲水も少し休暇を貰って自坊に帰り、15日から再び雪安居の修行に入る。この繰り返しを何十年もやっていると、体が自然に反応して、1日はほっと一息肩の力が抜ける。近年うちの僧堂も尼僧堂もそれぞれ、放行に出掛ける。うちは京都へ行きたいというので一泊泊まりで今朝出掛けた。尼僧堂は北陸地方へ出掛けた。留護の雲水と二人きりで留守番である。つい先日小田原へ葬儀を頼まれて出掛けた。この時期、猛烈に汗を掻くに違いないと、しこたま着替えを持参していったら、涼しいのに驚いた。殆ど着替えもせずに済んだ。帰路岐阜駅に着いた途端、地面から沸き上がるような猛烈な蒸し暑さに、「岐阜に着いた!」と実感した。関東の人は過ごしやすいところで暮らしているんだな~と、改めて感じた。