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2015年05月11日

往相と還相(おうそうとげんそう)

浄土教では二種回向(にしゅえこう)と言って、念仏を唱えれば阿弥陀仏のおかげで必ず極楽浄土へ行けるという。これが往相である。だが念仏者は永遠に極楽浄土に留まることは出来ず、極楽の門を出て、苦しむ人を救うために、この世に還らねばならない。これが還相である。この文章を読んで、ふと、はるか55年前のことを想いだした。当時私は京都の寺の小僧だった。その寺には常に市内の大学に通う学生が7,8人下宿していた。18歳の私から見れば下宿の大学生は皆兄貴分で、中でも京大の院生だったKさんは、何かと可愛がってくれた。ある年の年末、恒例の顔見世興行に誘われ、詳しい解説付きで初めて歌舞伎というものを観た。その時帰りの喫茶店で話してくれたのが冒頭の往相と還相の話である。禅僧は修行はしっかりやるが、修行して得たものを、今度は世間の人たちのために還さなければいけない。これが出来ていないように思うから、淸田君は修行して必ず世間に還して下さい。このときの言葉、数十年経っても鮮やかに蘇ってくる。

投稿者 zuiryo : 2015年05月11日 12:55

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