« EU離脱か残留か | メイン | 整頓が苦手 »

2016年06月25日

30年の空間

印度北西部にあるエローラをご覧になったことがあるだろうか。私はもう40年以上も前、インド仏蹟巡拝の折り,アジャンタ洞窟と一緒に見た。此処は巨大な岩山を地下に向かって削り出し掘り出して、高さ三十メートルはある巨大な寺院を造り出してしまったのである。もとはただの岩山である。その精緻な造形にはただ唖然とするばかりで、本当に人間が造り出したものなのだろうかと思った。今何故そんな昔の話を持ち出したのかというと、ある本を読んでいたら、作曲家の芥川也寸志がこのエローラ寺院群を見て、その衝撃を音楽化して,エローラ交響曲として発表していると書いてあった。てっぺんから地下室を掘るようにして、建物として残さなければならないものを残しながら掘っていく。此処の何でも無い空間というのは、30年かかって取り除いた空間なのである。つまりその巨大な建物はもともとあったものなのである。ピラミッドやバチカンでも、確かにでかいと思うが、そのプラスのでかさには限度がある。しかしこのエローラは全てマイナスだから、止まるところがない。だから大きさがどんどん大地に続き宇宙に続いていくような,自分がドンドン小さくなって、すいこまれていくような大きさを感じる。ガンとやられて、ずっと日が暮れるまで坐って,丸一日いろいろなことを考えた。一生懸命プラスして何かをつくって良しとしていたが、そっくり裏側が残っていたのではないか云々・・・・。早速エローラ交響曲のCDを買い聴いてみた。もう一度機会があったら,この目でエローラを見直したいと思った。

投稿者 zuiryo : 2016年06月25日 12:09

コメント