2016年06月28日
風の電話
以前、NHKで放送されたのでご覧になった方もあると思いますが、岩手県のある方が、突然癌で親を亡くし悲嘆に暮れている親戚の者の姿に忍びず、使い古しの電話ボックスを譲り受け、屋敷内の畑の隅っこに設置した。昔の黒電話を置いて、勿論線など繋がっていないのだが、その中で亡き父親と電話で話をして貰うと言うことを考えた。誠にユニークな発想である。この「風の電話」は心で話すのである。静に目を閉じ、耳を澄まし、風の音、波の音、小鳥のさえずりが、あなたの想いを伝えてくれる。空に居る想う人と静に対話するための電話である。設置して間もなく、東日本大震災があって、多くの方がこの電話を利用するようになった。少しでも心を慰めて貰うために、まわりに花を植え、現在は休憩所まで設えた。最初にこれを思い付いた佐々木老人の、何と深い心根だろうか。生活に必要な住まいや食べ物などが行き渡るようになっても、なお愛する家族を失った心の闇は消えない。その心を少しでも癒やすことが出来たらと考えて作られたこの「風の電話」、何と素晴らしいことではないか。
投稿者 zuiryo : 2016年06月28日 16:16