2016年12月29日
昼行灯の面目
星はいついかなる時にも空から消えない。昼の星は夜の星より明るく美しいほどなのに、その姿を認めることは、太陽の光に遮られ、永遠にかなわない。現実に存在するのに多くの人の目には見えないものがある。逆に圧倒的な現実と思われるものが、単なるこけおどしだったりする。目に見える現実の裏に控える、紛れもないもう一つの現実。文学作品の究極の面白さは、思いも寄らなかった別の側面に気付かされ、常識で凝り固まった脳みそが揉みしだかれる快楽にある。現在の常識では捕らえられないが、厳然とある現実を発見すると、時流に逆らってでも伝えたくなる。オリガ・ベルゴリッツ「昼の星」の一節。普通の目には見えない、それゆえ恰も存在しないもの、私を通して、私の魂の奥底の、もっと澄みきった薄暗がりを背にして、あらん限りの輝きを放ちながら、万人の目に見えるものとなる。ものを書くときはこうありたい。昼行灯の面目を一新してやりたい。
投稿者 zuiryo : 2016年12月29日 10:46