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2017年01月03日

最先端の医療

これは昔、ロシアのモスクワで、ある著名な経済学者M氏が蜂に刺されてしまい、右手がグローブみたいにふくれあがったときの話である。早速ホテルの医務室へ行くと、通訳の私も同行のM氏も、扉が開いて思わず後ずさった。白衣の当番医は堂々たる体躯のおばさん、幅も奥行きも、小柄なM氏の二倍はあろうかと思われる。「オレ、いいよ。なんかヤバイよ」引き返そうとしたがもう遅い、「あら、今日はスズメバチの犠牲者が、これで三人目」女医さんは右手をむんずとひっつかみ洗面台のところまで引っ張っていった。「あああああああーっ」顔面を引きつらせ恐怖の悲鳴、あきらめの尻すぼみになったときだった。女医さんは蛇口をひねると、勢いよくほとばしり出る水の流れに、右手のふくれあがった部分をグイッと突っ込んだ。「ヒーッヒーッ冷てーっ」身をよじって手を引っ込めようとするが、そこは力の差がモロに出て、女医さんは片手で軽々と右手を水の中に押さえ付けたまま、もう片方の腕にした時計をのぞき込み、「何を大げさにわめいているの、患部を冷やすために、あと10分ほど水に当てますからね」きっかり女医さんの言ったとおりに解放されたときには、右手の感覚が麻痺するほど冷え切ってしまった。だがしかし、腫れは嘘のように引いた。友人の内科医に、この出来事を話して聞かせると、一笑に付された。「100年くらい前の話みたいだね」だがしかし、今の日本の薬漬け医療よりは、はるかに先を行っているのではないか、と言う気がしてならないこのごろである。

投稿者 zuiryo : 2017年01月03日 04:23

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