2017年10月07日
フェルメールと北斎の青
フェルメールと北斎をつなぐ線は何か。それはブルーである。青は不思議な色である。空の青、海の青、青は自然の中のあらゆるところに見ることができる。大気にせよ、水にせよいずれも生命に直結した重要な色である。しかし青い色を空や水の中から取り出してくることはできない。青はいつも遠い色である。そんな青が人の心を捉えることをフェルメールは正確に気が付いていた。青は貴重な宝石ラビスラズリを惜しげもなく使い、「真珠の首飾りの少女」を描いた。ラビスラズリは当時アフガニスタンにしか産出しない貴重な青い宝石で、金よりも高価だった。ベロ藍、またの名をプルシャンブルー、北斎が選んだ青は、鉄イオンの媒体だった。この類まれな物質。ベロ藍はラピスラズリよりずっと細かい粒子であり、極めてなめらかに水に分散させることができる。北斎はこの青を見逃さなかった。フェルメールの果たせぬ夢をついに実現した画家、それが葛飾北斎である。止まっていたフェルメールブルーを世界で初めて動かして見せたのである。小布施には北斎の傑作、男波と女波の天井画がある。青い大波が砕け散りながら旋回している。見上げると宇宙のかなたの星雲に吸い込まれていくようだ。
投稿者 zuiryo : 2017年10月07日 15:55