知人で以前ご両親が亡くなられたのを切っ掛けに、近くのお寺に墓地を取得、立派なお墓を建てられた方がいる。いずれ自分もそのお墓に入り、後は息子に守って貰うというわけである。月日が経って最近、頼りにされていた奥さんを亡くされた。二人きりの穏やかな日々は突然の不幸で幕を閉じた。齢八十後半でこの事態には堪え難かったに違いない。しかしご長男が居られ、いまは少し離れたところで家庭を持っているが、後のことは任せられると安堵されていた。ところが何とそのご長男も、まるで後を追うように亡くなってしまった。人生の最晩年にこのような理不尽な目に遭うとは、この世に神も仏もないと言いたくなる。ご長男の子供さんは娘さんばかりだから、大切なお墓も、後を守ってくれる人は居なくなった。先祖代々未来永劫守って欲しいという願いは儚(はかな)くも露と消えたのである。身近にこういう現実を目の当たりにすると、先祖代々のお墓に対しても、また人間の死に対しても、もう一度考え直してみなければならないのではないかと思った。
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