かつて日本人の命がテロリストに狙われたとき、人間の命は地球より重いといった政治家がいた。たしかに人間の命ほど尊いものは外にないのだが、しかしこの考え方は太古の昔からずっと変わらずそうだったのかというと、必ずしもそうではなく、時代によってずいぶん違うもののようである。男の平均寿命が八十歳と言うが、いつの間にか私も余命八年になってしまった。まだ結構元気で現役の師家として雲水と早朝より動き回っている。突然癌の宣告でも受けたら別だが、この調子ならまだまだやれそうだ。しかし周りを見渡すと、友は死んでいくし、お喋りする相手も少なくなって、新しいこともなくなり、好奇心が湧き感動が生まれることも減ってきた。結局これ以上長生きしても何も変わらないような気がする。これが死というものなのかも知れない。
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