開浴には本浴と随浴の二種類があつて、おもに四九日の時は本浴と成る。堂内員は大衆頭を先頭に一列に並んで浴室まで行くと順次ばったばら菩薩″に三拝、入浴となる。しかし一度に七、八人が狭い風呂に入るため、体を洗うのは何とかなっても、おおよそゆっくり湯槽に浸かるなどということは望むべくもない。夏ならともかく寒い冬の時期などは体が温まることはない。ところが臨時に設けられる随浴では、文字通り随意に入れるから、この時ばかりは思 う存分湯槽に浸かって日頃の疲れを癒すことが出来る。ところで体を洗うていっても石鹸などは一切使わない。まずタオルをしっかり絞って両腕、両足最後に背中を毛穴と反対方向にゴシゴシ擦り上げ、全ての垢を寄せ集め右肩のところで手の平で受ける。これをお互い同志でやり合うのである。特に大接心の終った翌日は高単さんが新参者には親切に力任せに擦り上げる。痛いやら有り難いやらだが、驚くほどに垢が出 る。この後肩を揉んでくれるのだが、厳しくしぼられた後のこの親切は本当に僧堂の醍醐味である。三黙堂の一つである浴室ではこれらを無言のうちに沐浴するようにやるのである。
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