坐禅は専ら禅堂で坐るわけだが、これを規矩坐(きくざ)と言って、直日(じきじつ)の指導のもと整然と行われる。堂内では規定(きじょう)でこと細かく決められており、一挙手一投足決まり通りにやらなければならない。私がまだ新到(しんとう)のころ、解定(かいちん)後単箱の中に仕舞っておいたものをどうしても出さなければならなくなり、そっと音を立てないようにやったら、途端に隣単の者から叱責を受けたことがあった。その他にも数え上げたら切りがないほど沢山決まりがあって、先輩からその都度叱られながら徐々に覚えて行くのである。
新到にとっては、ただでさえ万事不慣れな上に、幾つもの決まりで雁字搦めになるので緊張感は更に増す。僧堂では原則何事も教えず、周りのやることを見ながら自分で覚えて行くのである。
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