四年程前、朝からからりと晴れ上がり、
暖かな風が気持ち良く吹き抜ける四月始めの日曜日のことであった。日課の山歩きは陽気の良さに誘われるように午前十時過ぎに寺を出た。山道は橿森公園の登り口より二百段ほどの急坂な階段を登り、やがて通称水道山に到る。そこには猫の額ほどの平地があって、今上陛下御生誕記念に植樹された桜が十数本、今を盛りに咲いている。そこから伊奈波神社に到る往復約一時間半のコースである。
せっせと歩くと額から汗が吹き出す。伊奈波神社で折り返し帰路、水道山に差し掛った。昼時であったのか満開の桜の木の下で親子三人、弁当を広げて今当に食べようというところであった。木の下には粗末なベンチが一つあり、三十五、六才の父親がその左端に腰掛け、四、五才の女の子がベンチを食卓代わりにして地面にべたりと坐り込んでいる。その隣にも小学三、四年生ぐらいの女の子が同
じょうにして坐っている。
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