昨年の十二月、大変お世話になった老庵主が八十一歳で亡くなられた。この老尼は私の修行が二年目の頃、我々の道場にやってきた。勿論男ばかりの中で、一緒にというわけにはいかず、老師のお世話で門前の尼寺に身を置いていた。道場へは毎朝午前三時半に上って来て共に朝の勤行をし、その後本堂裏手にある霊屋のぬれ緑で独り坐禅を組み、朝の参禅を済ませて尼寺に帰る。日中は老尼を輔け
て寺の仕事をし、夕方になると再び道場へ上って坐禅、参禅。解定(かいちん、消灯就寝のこと)を過ぎて深夜に至るまで夜坐という繰り返しの毎日であった。当時は二十数人の雲水がおり、血気盛んな年頃の者ばかりだったが、そんな中でも庵主さんの刺とした修行振りは目を見張るばかりであった。寺で行事があると、必ず點案(料理を造る係) で、頭には捻りはじまき姿、自分の子供ほど年の違う雲水を相手に陣頭指揮をし、もたも
たしていると叱り飛ばさんばかりの勢いだった。
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