もう二度と人を頼りにすまいと思った。どんな辛いことがあっても、自分には此処にしがみついて頑張るしか他に場所はないのだ。今にして思えばこの瞬間こそが私にとっての本当の出家だったのである。爾来十数年の修行中何度も挫折と克服を繰り返し、その度に私は何故出家したのかという自問をしてきた。両親共、特別信心深いということはなかったし、周囲にも私 を寺に結びつけるようなものはなかった。 そういう環境の中で生まれ育った私が不思議にもこんなに深い仏縁に結ばれたのである。我々は知らず知らずの内に先祖伝来脈々と受け継がれて来た何かをそれぞれ持ち合わせているのではないだろうか。そこには、私という小さな存在を越えた大いなるものの力を感じる。結局私の出家もそういう処から成るべくして成ったのではないかと今感じている。 |