「とてもいいですよ!今度この歌手について書きますが、CDをお送りしますから是非聴いてください」と言われ、間もなくして彼からCDが送られてきた。初めは義理で聴いていたのが何度か聴くうちに段々好きになってきた。理由はよく解からないが不思議と心にしみた。しばらくして彼から「今度名古屋で コンサートが開かれますのでチケットをお送りします。是非お出かけください。」という手紙と入場券が送られてきた。私はそういったライブには今まで一度も行ったことがなかったので、ともかく興味津々であった。待ち兼ねたように当日出掛けてみると観客の殆どが四、五十代のご婦人方で、もちろん若者のように立ち上がって踊りだすというようなことはないがその熱気たるや凄まじいものであった。一五五センチの彼女の小さな体から 発せられるエネルギッシュな歌声に観客の多くは魅入られているという感じである。
そんなことがあって又しばらくして今度は出版社から一冊の本が送られてきた。川上貴光著高橋真梨子−とびらを明けてー″である。読み進むうち、中に大変興味の引かれる話しがあった。玉川大学の数理芸術学というユニークな学問をされている佐治晴夫氏の説によれば、人間が心地よいと感ずるのには必ず一定の法則があるというのだ。たとえば渚に寄せる波の音や小川のせせらぎ、そよ風 等々誰でも共通して心地よいと感ずるものがある。それは何故なのかというと、自然界は ゆらぎ″ に満ちているそうで、このゆらぎと波長が合致したとき心地よいと感ずるのだそうだ。この理論は自然界の現象だけでなく音楽や美術、絵画、彫刻、建築など多岐にわたって証明されるというのである。
この宇宙のゆらぎということをある人に話したら、こういうことがあると聞かされた。この世の中の全ての物質は細かく分析して行くとそれはつまり原子という小さな球状の集まりなのだという。しかしよく調べると、その球状のものの中心には核があり、周りにエレクトロンと一体となったそのゆらぎの輪が球状に見えていたのだと解ってきた。つまり球状のものは無かったのである。更に研究が進むと、そのニュークリアーと言われた核も実はニュートロンとプロトンという二つの粒子のゆらぎの輪であることが解ってきた。つまりニュークリアーも無かったのである。そして更に研究が進むとこの二つの粒子もじつはクオークという構正子のゆらぎの輪であったことが解った。つまりニュートロンもプロトンも無かったのである。現在の科学ではここまで証明されているというのだが、多分やがてこのクオークも無かったと証明される日がくるだろう。こうしてみると全ての物質は限りなく無″なのである。
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