次ぎに夫婦の絆。私は結婚していないので言う資格もないが、聞くところによると、夫婦なんぞ、結婚して四、五年も経つと、顔を見るのも嫌になるらしい。亭主元気で留守がよいと言うわけだ。知り合いで、猛烈な反対を押し切って恋愛結婚をしたのが居る。だが十年も経たぬうちに、氷河期を迎えて、殆ど口もきかなくなってしまった。この夫婦にしても、一度は好きで一緒になったのだから、たとえ目には見えなくとも、そこには二人を結びつける何かが作用して、結婚を決意し今日に至ったわけであろう。その目には見えないが、しかし確実に存在したであろう何物かを見いだす眼を持ち、努力しさえすれば、今とは又違った生き方を見つけられるのではないかと感ずる。
次ぎに友人である。私にも今までいろいろな友人が居たが、残念ながら、その後の様々な経緯で、結局失ってしまった人もある。まっ、縁がなかった、と言ってしまえばそれまでだが、私自身に度量がなかったのかも知れない。通り一遍の付き合いなら其れなりに続いてゆくが、少し深い付き合いになってくると、相手の欠点がやたら目について、段々離れていってしまうのだ。夫婦でも友人でも馬が合うとか合わないとかいうものは理屈を超えたもので、結構重要なことなのかも知れない。勿論そういった友人ばかりではなく、一方では私を陰から支えて下さる有難い友人もたくさんいる。
さて国家と言われても、ちょっとピンと来ないかも知れないが、パスポートを携え外国旅行をしてみると途端に国家を意識するようになる。それはパスポートは命より大切なものだからである。もし外国で事故や事件に巻き込まれたら、日本大使館や領事館が即座に保護し世話をしてくれる。パスポートの表紙を開くと一頁目に、「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう、関係の諸官に要請する。」と記されているのをご存じだろうか。ところが日本国内で生活していれば、まさしく日本人そのものなので、勿論パスポートは不要である。近頃「愛国心」について盛んに議論されているが、難しい理屈は抜きにして、日本人が自ら国家を愛し守らずして、国の安全が保証されるなどと考えているなら大間違いである。力と力の微妙なバランスの上に成り立っている国際社会では、自国を守るに必要な武力を持つのは当然のことであり、そのために愛国心は欠くべからざる事柄である。
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