元の状態では形はドロドロ、水っぽく、味もない。そこでまず、安い廃鶏のミンチ肉を加え、増量しソフト感を出すために組織状大豆タンパクも加える。これでベースは出来たが、このままでは味がないのでビーフエキス・化学調味料などを大量に加え味付けをする。さらに歯触りを良くするためラード・加工でんぷんを投入、結着剤、乳化剤も入れる。色を良くするためには着色料、保存性を上げるために保存料PH調整剤、色あせを防ぐために酸化防止剤も使用。以上でミートボール本体の出来上がりだ。これにソースとケチャップをからませるのだが、市販のものは使わない。採算が合わず、値段を安く出来ないからだ。コストを下げるためには添加物を駆使してそれらしいソースを作らなければならない。まず氷酢酸を薄めカラメルで黒くし、それに化学に調味料を加えソースもどきを作る。ケチャップの方はトマトペーストに着色料で色を付け、酸味料を加え粘着多糖類でとろみをつけケチャップもどきを作る。このソースをミートボールにからめて真空パックに詰め加熱殺菌すれば商品の完成。以上で添加物は20〜30種類は使っている。もはや添加物のかたまりで、このミートボールは原価が大体20〜30円で、売値は1パック百円弱となる。発売以来忽ち大ヒット商品となり、メーカー側は笑いが止まらないという次第。本来なら使い道がなく廃棄されるものが食品として生きるのだから、環境にはやさしいし、一円でも安いものを求める主婦にとっては救いの神である。使った添加物は全て国が認可したものだから、食品産業の発展にも役立っているわけである。しかし自分の子供には絶対食べて欲しくないというのだ。
或る工場長は、「俺のところの特売用ハムは駄目だ。とても食べられたもんじゃあない。」また漬け物工場の経営者は、「価格破壊の商品とはいえうちの漬け物は食うなよ。」塩漬けされた黒ずんだ野菜を漂白したあげく合成着色料で色を付けて誤魔化している。レンコン会社の社長は「あのレンコンは自分では食べない。真っ黒な廃材のような色をしたレンコンが、薬に漬けて一瞬のうちに真っ白になる過程を見ればとても口に出来ない。」という。またある時、アジの干物を作っている工場のパートのおばさん達に割引で買える社内販売カタログが回ってきた。そこには自分のところで作ったアジの干物と、こだわりスーパーのアジの干物が掲載されていた。パートさん達は全員こだわりスーパーの方の干物を選んだという。自分たちの工場では次々と白い粉を大量に流し込んだ添加物の液体にアジを漬けて作る。中には刺激臭のあるものもあり、ゴボゴボ咳き込みながらの作業である。おばちゃん達は専門的な知識などないが、わけの解らない粉を大量に溶かし込んで作った干物は本能的に気持ち悪
いから、食べないのである。
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