第二番目は「知識」である。創造力は常に未知な問題と格闘せねばならない。この時、先人が過去に積み上げてきた知識をしっかり身につけると言うことは実に大切である。自分にはまだ見えていない先に、大きな世界が広がっていることを確信し、その為のねばり強い努力が必要である。
第三番目は「執着心」である。「想い出すよじゃ惚れよがにすい、想い出さずに忘れずに」寝ても覚めても考え抜くねちっこさがなければいけない。ちょっと考えて分かるようなことなら、とっくに誰かが思いついている。私は自分の節目になるような大きな問題を抱えたときは何時も三年は考えることにしてきた。当然その途中では幾らでも「これで行くか」と思うときがある。しかしそれを自ら否定し続け、結論にはしないのである。やがて、心に納まりの良い結論を得ることが出来る。こう云うのは淡泊な性格の者には出来ない。兎も角、食らいついたら納得が行くまで深く追求して行く執念深さがなければいけない。頭の良い奴は直ぐに先を見てしまうから、ねばり強さに欠け、ただの評論家になってしまう。
第四番目は「楽観的」である。禅の修行で言えば、お先真っ暗の連続なのだから、暗かったらとても続けては行けぬ。つまり楽観とは愚鈍であり、バカほど強いものはないのだ。修行中、老師から繰り返し「バカになれ!」と言われた。その時は余り深い意味が分からなかったが、今となれば、この「バカ」、なかなか奥深いものを感ずる。折角努力を積み重ねてきても、何かで蹴躓き絶望し一端投げ出してしまえば、全ては終わってしまう。「我は愛す、この鈍感を」である。
第五番目は「論理的思考力」である。折角の知識も恰もただ本棚に並べているようでは何の役に立たぬ。目的に向かって蓄積された知識が、一筋の線となり、繋がってゆかなければ駄目だ。
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