「子育て」に悩んでいる親は多い。子供を育てる規範は時代によっても社会によっても随分違うものである。むかしは子供の教育方針として、「嘘をつかない、盗みをしない、他人に迷惑を掛けない」という徳目があった。しかし他人に迷惑を掛けないということ一つをとっても、例えばアメリカ人が子供に教えたいことの徳目トップ二十五にも入らない。またこういう話がある。ニューギニヤのある村から石油が出た。その開発権利を買い取るため、アメリカの大きな石油会社は、優秀な国際弁護士を何人も現地に送り込んだ。こう言うと、素朴なニューギニヤ人は国際弁護士に騙されたんだろうなと思うかもしれないが、結果は逆だった。彼らがやったことはまず「嘘」をつくことだった。漸く合意にこぎ着けたときは、その次に会ったとき、「そんなことは言ってない」と反故にすることを繰り返した。弁護士は交渉のプロだが、嘘をつかれることに慣れていないから、対応が出来ず時間だけが過ぎて行く。さらに弁護士は時給八百ドルで働いているが、ニューギニヤ人は時間だけは無限にある。結局腕利きの弁護士たちは音を上げてしまった。
|