ゴリラ研究の山際寿一氏と生物学者の福岡伸一氏の対談で、非常に興味ある話があったので引用させて頂く。以前、石原慎太郎氏のいわゆる「ババア発言事件」があったが、それはこういうことである。「文明がもたらした最も悪しき有害なものはババア」「女性が生殖能力を失っても生きているのは無駄で罪だ」というのである。しかしそのことが社会に負担を掛けているという考えには賛同できない。お婆さん自身は子供を産めなくとも、娘が産むのを手助けしたりすることができる。また次世代に知恵を伝えることが、何らかの社会的な機能を果たすということもある。人間は猿やゴリラに比べると、圧倒的に難産で、母子ともに生命の危険がある。だから誰かに手伝って貰わなければならない。そのためまだ体力のあるうちに、残りの人生は娘や孫の世代のお産の手助けに回る。結果として人間の種としての生存を高めるわけである。
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