禅堂での坐禅の時間は雨安居・雪安居で違ってくる。比較的短い夏場でも夜には四時間坐り、冬ともなれば、ぐっと長時間に及ぶ。特に臘八大接心になると、八時間連続と言うこともある。しかしこの間、途中に何回か、東司へ行く二便往来(便所へ行くこと)がある。三・四十分の止静が二回ほど続くと、やがてチ〜ン・チャキッ、チャキッと柝の合図があり、これと同時に、直日の「きんひ〜ん!」と言う大声で一斉に敷き瓦に降りて、禅堂の外回りを雁行するのである。これを経行と言い、歩いている間にそっと輪から抜け出して便所へ行っても良いのである。済めば再び輪の中に入り経行を続ける。この間凡そ十分ほどで、再びチャキッと言う柝の合図と共に一斉に禅堂に戻り、さらに坐禅を続ける。新到の頃はまだ坐禅に慣れていないため、足の痛みは極限状態となり、目の前の敷き瓦が波打ってきたり、歪んで見えてきたりする。額には脂汗がじっとり染み出て、「もう駄目だ!」と思っているときに聞く、直日の打つチ〜ンは、まさに地獄に仏である。
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