雲水にとって一番のご馳走はうどん供養である。特に大接心には必ず中日の斎座はうどん斎と決まっていた。みんな堂内を出るときから予め帯を緩めて、目一杯食べてやるぞ〜と言う意気込みで飯台座につく。うどん斎にかぎって、単の隔てなく、たとえ高単が食べ終わっていても、幾ら待たせようがかまわないという決まりがあるから、心おきなく腹一杯食べることができる。更にその上の饗応ともなると、盆と正月が一辺に来たような気持ちになる。
饗応で忘れられないのは六月暑い盛りに、近隣の尼僧さん達が十数人集まって、僧堂の典座を使い、雲水のためにぼた餅の年、巻き寿司の年というぐあいに、毎年交互に供養して下さったことである。俗に馬が食うほどと言われるように、雲水の食いっぷりたるや、並ではない。
このチャンスを逃しては次にいつやって来るか分からないから、おもっきり食べる。端から見ていても頼もしい限りで、修行も一生懸命だが、食うときも一生懸命なのである。田舎僧堂では当時、近隣に沢山尼僧さんが居られて、開山忌や祠堂斎などで人手の要るときはいつも荷担して下さった。我々も一緒に貼案寮に入って、尼僧さん方のてきぱきと要領を得た仕事ぶりに、大いに勉強させられたものである。
|
|