どやしという言葉は一体どこから出てきた言葉なのかよく分からないが、僧堂生活の表向きの行事とは違った、内密のもので、しかし何処の僧堂でも伝統的に行われているものである。やり方も僧堂の立地条件や伝統で違いがあるようだが、どやしは修行中の懐かしい思い出の一つである。
私が入門したときは一辺に二十二人も大量に入ったので、良くも悪くも活気があった。人教が多いとお互いに競争心が湧いてきて、いろいろな面で競い合ったものである。そういう気分がこのどやしにも表れて、堂内では密かによく行われた。僧堂の周囲は鬱蒼とした深い山に囲まれたところだったから、場所に事欠くことはなかった。しかし秘密にやることなので場所も自然に決まっていて、龍王水辺か通称はげ山と言われた小高い山の天辺でやった。堂内員も十数人居たので、全員でというわけにもゆかず、直日単・単頭単とそれぞれ分かれ、お互い明かさず単別にやった。決行日も余程周囲の空気を見てやらないと、見つけられでもしたえらいことになる。 |
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